蜘蛛(くも)の糸
蜘蛛の糸がついに人間を吊り上げました(YOMIURI ONLINE 5月23日)。蜘蛛に魅せられ25年の奈良県立医科大 大崎茂芳先生が、コガネグモの糸約19万本を束ね長さ約10センチ、太さ2.6ミリのロープをハンモックをつるす紐の一部に使い、体重65kgの先生を見事吊り上げました。机の上では色々計算できますが、実際に人を吊り上げるなんてやはり感動します。
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」では罪人、犍陀多(かんだた)が御釈迦様の下ろした蜘蛛の糸を手繰り寄せ、上りますが(結果は途中で又地獄に落ちてしまいます)大崎先生はそれが可能であることを実際に示したわけです。すごいですね。
1992年兵庫県でナゾの火災が起きました。ベランダの洗濯機が突然燃え上がったのです。原因は、蜘蛛が風呂釜のバーナー管へ巣を作ったためガスが逆流、空気取り入れ口から出火、炎が洗濯機のホースに燃え移り炎上したためでした。蜘蛛の糸は髪の毛の約1/10の太さでありながら、300-400℃の熱にも溶けないことがこの原因でした。蜘蛛の糸は強度が強いだけでなく、火にも強く、紫外線による劣化も起こらず、吸水性が高いためナイロンなどに比べて帯電しにくく埃もつかないなどの特徴を持っています。
蜘蛛の巣は通常7種類の糸から出来ていますが、その各々は太さや伸びの性能がすべて異なりこれを旨く使い分けているそうです。特に蜘蛛が行動するときに必ず出すという「牽引糸(けんいんし)」は最も強度が強く、太さを0.05mmに換算すると絹糸119g、ナイロン130gに比べて424gもの重さのものを吊り上げることが可能だそうです。このような糸を2本同時に出すことで安全性を高め、弾性率限界(力を除いても元に戻らなくなる境界―伸び切ってしまうとき)では蜘蛛の体重の2倍、破壊限界(切れてしまう)6倍の体重まで支えることが出来るそうです。素晴らしい安全対策ですね。
蜘蛛は4億年の進化の中で他のどんなものより素晴らしい糸の使い方を習得したのだと思います。(すごい自然のショールームでも紹介しています、是非参考にしてください) 2006年6月19日
大崎先生の著書 『クモはなぜ糸から落ちないのか』PHP研究所、「クモの糸のミステリー ハイテク機能に学ぶ」中央公論社 素敵な世界が見られます。




